21.      インターネット活用国際交流が若手教員にもたらしたもの     
福井商業高校   今村 仁美

 

ASEPは私のような若手教員にとってはまさにうってつけの「研修」であった。

教員は日常の教室の中で「裸の王様」になりやすい。ただ知識の切り売りをするような授業しかできず、「いい授業がしたい」と気持ちだけが焦り悩む中、私はWYMASEPに参加させていただいた。

 

1.ワールドユースミーティングから学んだもの
 

WYMに初めて参加して最も感銘を受けたのは、生徒たちが生き生きと英語で何かを伝えようとする姿だった。ああ、こういう生徒を育てていかなくちゃならないのだと強く感じた。後に、ある先生がひとつの言葉を教えてくださった。それは「コーチング」という言葉だった。その人の力を伸ばすように、支援していくことである。「WYMもコーチングの一つ。学生の表情や意見に耳を傾け、よりよく育つように支援していく、そしてそれを発揮できるような場面も設定していく。その流れの中にWYMがある。教師が、指導の腕を見せるとか予算が取れるというような自分の利益に走らず、ひたすら『自ら走る学生』を作ることが大事なんだ。」それを聞いたとき、自分の利益を追いかけるだけの今までの自分の指導が非常に恥ずかしく思えた。ふとまわりを見渡すと、生徒が輝ける場を作るために、裏方として日々奮闘している先生方がたくさんいらっしゃった。変わらなければ。変えていかなければ。そう思った。

 

2.国内連携から学ぶもの、国際連携から学ぶもの

 

まずは自分の英語力を高め、自分が楽しむことがコーチングにつながっていく。先生方との話でそう確信した私は、ASEPでもさっそく台湾の先生方にメールを送ることから始めた。しかし早々から私は失敗をしてしまった。メールのやり取りの中で私が必要な情報を書かなかったために、混乱を生じさせてしまったのだった。今回、私はこのような失敗を何度かやり、そのたびにインストラクター間で意思疎通を取ることの難しさ、いくつもの学校の生徒に共通した指導をすることの難しさを思い知った。

また、生徒への指導という点でも、私は何度か我慢をしなければならなかった。『自ら走る学生』を作るためには、何でもまず生徒に任せてやらせてみなければならない。同僚の先生に何度もそうアドバイスをいただいた。自分でできるからといって全て教師がやってしまうのではなく、敢えて生徒に任せてそれを見守りフォローを考える、そんな指導もあるんだ、ということに初めてそのとき気づいた。

このように、今回私はたくさんの失敗をした。しかし、失敗から学んでいくことができたのは、日本側の先生、そして台湾側の先生に助けていただいたおかげだと思う。

 

3.ASEPの印象

 

 生徒にとっては、やはり格別の「舞台」であると感じた。自分のメッセージを伝えるために、どれだけ自分の英語を磨かなければならないか、生徒が気づくには十分だったと思う。「先生、私たちより小さい子があれだけ英語を話せるのはなんでなの?」「台湾の子と打ち合わせをしたけど、言いたいことが言えなくてスクリプトを変えられちゃった。」「ホストの子といっぱい喋ったよ!」「あんなふうにプレゼンすればいいのか。」「緊張してやっぱり間違えちゃった。」生徒たちからは実りのある言葉がたくさん聞けた。WYMASEPという場があるからこそ、生徒にとって、それまでの準備期間や日々の授業に必然性が出てくるのだと感じた。

プレゼンテーションが終わってからも、パーティーにホームステイと生徒は非常に濃い時間を過ごしたことと思う。帰りの空港での別れ際の涙がそれを物語っていた。台湾の人々は、非常に「篤い」。私が台湾に来て強く感じたのはそれだった。「歓迎光臨」の文字に違わないHospitalityの高さに何度も驚かされた。WYMで一度会ったきりの生徒たちでさえ私を覚えていてくれ、感動の再会を果たした。また、台湾の先生方は忙しい中、数多くの人が私達を案内してくださったり食事会に参加したりしてくださった。WYMの際、同僚の先生方が「台湾の歓迎に見合うような歓迎を日本でもしたい。」と意気込んでいた訳が、ようやくわかった気がした。

 

4.ASEPに参加して

 

 ここには、普段の授業の中からは学べないことがたくさんあった。たくさん学んだ。英語の教員でありながら国際交流ってこうやってやるんだ、と今更ながら再認識した。ここからが私のStartだ。次のステップへと生かしながら、日常の授業の中にも「生の英語」を取り入れ、英語で何かを伝えることの大切さを生徒に伝えていきたい。

 

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