9 日本と台湾における教育ICTの活用
9.1 台湾におけるICTの教育戦略
9.1.1 世界第3位の活用国
人口約2,262万人(2005年2月現在・在留日本人16,000人)、面積36,000平方キロ(九州の85%)の台湾では、経済・政治・教育分野でのインターネットの活用が盛んである。「台湾を緑のシリコン・アイランドへと発展させる」という国家発展六年計画「チャレンジ2008」の下、積極的な取組が見られる。特に教育でのICT活用は1994年より取り組みその成果を上げてきた。またその予算的裏づけとなる教育予算も憲法に優先的な取り扱いが謳われている。台湾の生徒たちはインターネット活用を通して「生涯教育」への可能性も手に入れている。
現在、国際情報技術レポート2004-1005(世界経済フォーラムレポート)‘Global Information Technology Report
2004-2005’によると台湾はネットワーク化、活用率は世界第3位に位置している。
9.1.2 インターネット接続状況
2004年の学校数は159の大学、308の高校(含む職業高校)720の中学、2,639の小学校である。
文部省はコンピュータ教室を設置し、インターネット接続を強力に推進してきた、その結果.2004年の4月までにすべての中学校、高校にコンピュータ教室の整備とインターネット接続を完了した。小学校については40パーセントが コンピュータ教室をもち、20パーセントがインターネットに接続している。
台湾全土には教育ネットワークセンターが26設置されており、回線は少なくとも512KBPSのスピードで接続されている。このインターネット接続は年々強化されている。国内の主な都市はすべてT1の回線(1.5Mbps以上)で結ばれており、動画デジタルコンテンツの配布などを意識した回線の増強が現在進んでいる。
国の大きさもひとつの要素だと思う。オーストラリアを例に取ってみれば日本の国土の21倍もある。国の端から端へネットワークの回線を引いたと考えてみよう。その費用は単純に21倍となる。事実昨年シドニーの学校を訪れたとき、ADSLの512Kの回線で月額50,000円程度の利用料であった。
アジアの先進国のデータを見てみよう。台湾は九州ほどの大きさで、シンガポールは淡路島、韓国は北海道とほぼ同様に大きさである。
また国民のコンセンサスの得やすい教育改革の「改善、改革」はトップダウンの手法で徹底しやすい。
海外の会議に出ていると、日本以外は現場の教員がよく参加している。当然のことながら彼らは会議に参加し、情報交換も行う。原則英語力がある。ドイツで開かれた学会でもそうであった。
英語教員は当然であるがそれ以外の教員も活用していこうとする意欲が感じられた。
これらの教員の態度が生徒のインターネット活用能力や国際化、英語が使える台湾人構想へのハードルを低くしている。英語担当や国際化を語る身近な大人=教師たちの前向きな態度が教育全体の活性化につながっているように感じられた。
Ø 教員間の連携
日本では海外研修に行った先生が、その報告会を開いても、職場ではなかなか人が集まらない。こんな話をよく聞く。台湾やシンガポールの場合、教育委員会から派遣され、帰国後は地域の教員への報告会が準備されているという。このような形で「情報の共有」がなされている。
このように「共有」の土壌のある台湾の場合、教科での情報共有は実に見事だ。英語科で協力してリスニング教材を作ったり、さらには生徒自らが出演して英語の教材つくりが進んでいる。等身大の教材ほど効果的なものはない。授業の記録も復習時に動画で見ることができる。ネットワークが日常の学習のリズムにうまく当てはめられている。
日本においても2007年問題を前に「ノウハウの蓄積」と「公開」大きな課題となる。文部科学省ではそれを意識してネットワーク上で共有を促進している。
Ø 国と地方
インターネットの教育利用と国際化は台湾政府の重点政策である。
これらに対応した活動、インターネット活用による国際交流などの実践報告は、国の各分野の指導者によって共有されている。
これまで私は1997年から台湾との国際交流に取り組んできた。先月フィリピンで開催された国際会議で初対面ではあったが台湾からの代表者(文部省関係)は我々の活動内容も、中心人物もよく知っていた。台湾第二の都市高雄市活動ではあるがその情報共有の正確さに驚いた。
・ 学ぶべきこと
・
教師の態度
台湾で教師になるためには、免許を取得して大学卒業後1年間就職したい学校でインターンを行う。その後その学校へ試験の申請を行い、許可となれば晴れて教員となれる。英語のインターンに会ったが我々との会話の中で自分の英語力をその学校の校長や他の教員にアピールしようと非常ながんばりであった。一般の教師も夏休みには新しい指導法を求めて海外へ研修に出かけたり、自己研鑽に努めている。
・
校長の態度
校長も評価の対象となる。評価が低ければ一般の教員に格下げになる。学校をどう盛り上げ、新しい風をいれ、質の高い教育を実現していくか強力なリーダーシップを持っている。アメリカやオーストラリアでも同様の傾向が見られた。
* 今回のテレビ会議の準備のため台湾のバディ先生と何回か実験をおこなった。ある土曜日夜8時、研修のためと若い地域の先生が画面の向こうにいた。台湾だなと思った。
9.1.4 インターネット教育利用の歴史
・TANet の小・中・高への接続(1994-1996)
1994年に教育用ネットワークは開始された。文部省はIT活用をとおして時代に対応した人材の育成に力をいれ、さらに教育の質を変える取組を開始した。1994年に文部省コンピュータセンター(Computer Center of MOE 《MOECC》)は台湾の教育ネットワーク(Taiwan Academic Network (TANet))に小・中・高を接続した。同時にネットワークセンターも各地に設置され教育現場へのサポートに当たった。この時期には主にCD-ROMを活用したCAIが主流であった。
・初期パイロットプログラム (1997-1999)
1997年にまず大学レベルでインターネットの教育利用実験が開始され、文部省コンピュータセンターは教育ネットワークを活用してその活用方法を探った。その後その動きはk-12へと拡大していった。
・文部省の動きに連動した高校の実践
1998年にAJETプログラムが開始された。Advanced Joint English telecommunication/Teaching)このプロジェクトはICT活用と英語そして国際交流での活用を目的としている。1997年―1999年にはホームページを活用したオーストラリア、日本、イギリス、台湾で実践が行われた。このほか電子メールや、ホームページ活用による英語コミュニケーション力の育成のためのプロジェクトが1997年より継続して実践されている。
・ 小中高におけるプロジェクトベースの実践
2000年から2007年の長期計画が作成されている。その達成目標はコンピュータ教室だけでは無く、一般教室へのコンピュータの設置、インターネット接続の実現である。 日本同様、すべてでの教科でICTを活用した授業を実現しようとしている。このような実践を支え、支援するプロジェクトベースのICT活用が全土で展開されている。
EduCity 2000年より・・e-learningシステムを使った共同学習サイト。誰もがe-learningの中の学校
で学ぶ事ができる。
Seed Schools 2001年より・・ 約300の小中学校と80の高校が参加している。主に教師のICT
活用能力の育成を目的としている。またシード学校として学校間での連携もふくめ、イベントを実
施している。
・ネットワークを中心とした活用 (2003-2005)
・ NGO & NPO
Networking
教育分野と深い連携を持ってNGOの活動も盛んである。高校生たちは山間部と都市部のデジタルデバイド、高齢者のデジタルディバイドを解消するための取りくみを行っている。ネットワークを通して山間部の小学生に英語を教えたり、高齢者に対して指導したりしている。
・ ICT教育推進のための施策
・教員研修
教員研修はいずれの国においても大切なICT施策の一つである。2001年までに78,400人の教師に対してICTトレーニングを実施した。この数は全体の40パーセントに当たり、現在も研修は継続されている。また文部省コンピュータセンターは次の3つのICT教育の重要な柱として設定している。
Ø
各教科に於けるコンテンツの開発と効果的な活用法の提示
・各教育機関、教育NGOとの連携と情報共有の推進
・ICT情報教育環境の刷新と国際教育連携の推進
・教師のインターネット活用
台湾の先生たちは「改革」に積極的に対応しているように思える程度慣れた教師はホームページをつくり、さらにパワーポイントなどで教材作りを行う。カリキュラムをICT活用の観点から分析し、そして指導案を作成する。
また教師たちはe-learningシステムによって教材の提供を受けることが出来る。すべての自ら作るのではなく、このようなシステムを活用し、教材を共有し、効果的な活用方法に力を注ぐ事が出来る。また自分の授業を録画し、e-learningの一部コンテンツとして復習、あるいは欠席者への指導教材として活用することが出来ている。
4. ICT活用と今後の展開
2005年3月に実施された調査によると、台湾全土で12歳以上の人口の64.1% がインターネットにアクセスし活用しており、全国民の半数以上の家庭が高速インターネットに接続している。ADSL等のブロードバンドの普及がその数字を支えている。社会基盤としてのワイヤレスネットワーク化は各地域で鋭意進められており、公園、観光地、公共機関などではすでにその利用が始まっている。21世紀において1CTの教育利用は学校間の知識の共有、地域との連携、海外との連携の意味に置いて欠かすことの出来ない要素であり、かつて以上に今後の実践と発展が望まれる。
参考
9.1.5 台湾の教育制度
現在の教育制度は小学6年、中学3年、高校3年、大学4年。教育、法、建築学部は5年、歯学部6年、医学部は7年。義務教育は小学・中学の9年間である。新学期は9月1日から、前後期の2期制が取られている。小学校のほとんどは、公立である。私立は全体の1%に過ぎない。
中学校も小学校と同じようにほとんどは公立学校であり、公立、私立とも同じカリキュラムを採用することが求められている。高校への進学率も95.7%(2003年)と日本と変わらない。
表1 校種別学校数
|
総数 |
国公立 |
私立 |
小学 |
2,638 |
2,609 |
29 |
中学 |
720 |
709 |
11 |
高級中学 |
308 |
171 |
137 |
高級職業学校 |
164 |
93 |
71 |
|
生徒数 |
学級数 |
小学 |
725 |
24 |
中学 |
1,330 |
37 |
高級中学 |
1,280 |
31 |
高級職業学校 |
1,990 |
50 |
表3 1学級あたりの児童生徒数
小学 |
29.9 |
中学 |
36.0 |
高級中学 |
41.1 |
高級職業学校 |
39.4 |
日本の高校あたる学校には、高級中学、高級職業学校と総合高等学校の3種類がある。それ以外に日本の高等専門学校のように5年制の学校がある。
高級中学は、心身の発達とともに、高い学術を研究し、専門知識を学習する高等教育への準備を行うのが設置目的となっている。高級中学は、55:45の割合で公立学校がやや多い。カリキュラムは、公立と同じである。日本の私立高校数は1321校(2004年)、全体の24%程度なので、日本よりもかなり私学が多いことになる。
総合高等学校は、10年ほど前から試験的に設置され、さまざまな科目を自由選択できる学校である。日本の高校では総合学科にあたるものである。
高校のカリキュラム全体は、日本とそれほど変わるものではない。週単位の授業時数は、高級中学で33〜37時間、高級職業学校では1・2年が37時間、3年が34時間である。高校のカリキュラムとして、日本では考えられないのが軍事訓練の時間である。もちろん台湾には徴兵制度のあることがその理由である。
高級中学からの高等教育への進学率74.9%と非常に高い。日本の場合、専修学校を含めると75.9%(2004年)となる。
2. 台湾の教員
学校教員の養成は、中等教育と初等教育の2種類の養成課程がある。現職教員に対しては、台湾師範大学など数ヶ所に研修センターを設置して、常に教授法や教材の改善を行えるよう教員の資質向上を図っている。
教員の構成を見ると女性教員の比率に大きな違いがある。小学校では日本と変わらないが、中高では合算ではあるが台湾の方がかなり高い。
表5 女性教員の比率(%)
|
日本 |
台湾 |
小学校 |
62.7 |
67.7 |
中学校 |
41.0 |
60.8 |
高校 |
27.5 |
2003年度では、GNPの6.23%、6349億台湾ドル(約2兆1650億円)の教育費が支出されている。一方日本はGDPの3.5%(2001年)となっている。単純比較はできないが、台湾では非常に多くの予算が教育に割り当てられていることが理解できる。
日本の状況
私が委員をしている、文部科学省初等中等教育局は2005年をマイルストーンとして教育の情報化を推進してきた。
下記は昨年12月8日に発表されたデータである。(調査時点は9月30日)詳しいデータは
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/12/05120502.htm
参考文献
Ministry
of Education. 2004 Education in the Republic of
blic of
台湾文部省
http://140.111.1.22/english/home_policy.htm
台湾政府
http://www.gio.gov.tw/taiwan-website/5-gp/yearbook/
教育改革
http://www.gio.gov.tw/info/taiwan-story/education/eframe/frame3.htm
I have got the most updated infomation from the MOECC.
The following are the information you requested.
Internet access in schools (Taiwan)
the end of year 2004
every senior H.S and Junior H.S became to have internet access.
is this information right?
Answer: No, the information is wrong.
Every senior and junior H.S. installed Internet access
by the end of year 1999.
as for Primary schools
Only 20 persent of them has installed Internet.
40 percent of them has computer Lab.
Answer: No, the information is also wrong.
100% of Primary schools have installed Internet access.
100% of them has computer Lab.
I've heard this one . but it looks strange for me.
would you please tell us the correct data for internet access among
schools?
1 year and access rate
primary Junior H.S senior H.S
2001 100% 100% 100%
2002 100% 100% 100%
2003 100% 100% 100%
2004 100% 100% 100%
2005 100% 100% 100%
if possible please let me know , internet speed.
51.41% of them use ADSL(1.5M/384Kbps) to access Internet.
25.20% of them use 10Mbps Ethernet.
22.30% of them use 100Mbps.
1.09% of them use 1000Mbps.
台灣學術網路(TANet)概況
中華民國94年底
國?電路
ADSL---- 專線 --**----光纖---------**- 其他
-----T1- T3- E1**- 10M -100M -1G以上 ***
1338 -3- 16- 16--- 1189-- 1360-- 103----62
資料來源:教育部
Happy Chinese New Year!
Nian-Shing