日本福祉大学 影戸 誠
ASEP
とはAsian Student Exchange Programである。2000年よりの継続プログラム、台湾高雄市の教育局にサポートされた、日本と台湾を中心とする国際協働プログラム。今年で13年目を迎える。日本で毎年開催され、文部科学省後援行事であるワールドユースミーティングの姉妹プロジェクトである。
インターネット活用と英語プレゼンテーション、コンフリクトリゾリューションがキーワードとなる。
異文化(Heterogeneous)な環境の中で英語協働プレゼンテーション作成活動を通して次のことを習得する。
Ø Conflict
resolution の体験を通して、文化衝突、意見の調整方法を体験的に学ぶ
Ø 英語を活用することによって英語を母語としない英語活用者の間のコミュニケーションの方法を学ぶ
Ø インターネットの機能をフルに活用し事前に交流を進め、プレゼンテーション、ホームスティプログラムの準備を進める。
Ø 滞在中集中的にプレゼンテーションを作り上げ、タイムマネジメントの力をつける
Ø 日本、台湾、韓国、インドネシアの英語教育の手法と現状について知る
Ø 参加学生の国別英語能力の違いとその原因をリサーチの中で探る
Ø 日本の高校生、大学生が海外学生との比較において英語能力がややおも低いと思われるならばその原因と対策について考慮する。
来日前・・テーマにしたがって、オンラインで構成を練り、スカイプなどのやりとりを通して構成を練る。
現地・・最終的な詰めを行う。ステージでの立ち位置を確認し、ともに当日を想定して発音練習、マイクのハンドリング、挿入する劇などの練習を行う。
大会当日まで
記者会見、各校での交流会などに参加準備を進める
大会当日 1000人程度の聴衆の前で英語プレゼンテーションを行う。ジャッジの得点により、2つの種類の賞が与えられる。プラチナ章(特に優れた発表)、とゴールド賞(よく工夫された発表)。表彰は教育局局長
12月23−24日 |
京都、大阪、名古屋、福井などから台湾高雄市に到着 |
事前に交流校が決められており、チームを作って活動 |
25日 |
学校訪問、スクリプト調整 |
Skype などのテレビ会議を活用し事前に調整を行う |
26日 |
学校訪問、スクリプト調整 |
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27日 |
記者会見 高雄市教育局局長との懇談 |
午後は、文化施設訪問 高校生は各校にて完成まで持って行く |
28日 |
ASEPプレゼンテーション大会、交流パーティ |
レフリーが評価を行い、プラチナ賞などが決められる |
29日 |
市内での文化交流 |
かなり親しくなって交流 |
30日 |
帰国 |
見送りに来る学生生徒との別れ |
参加学生の英語能力について述べてみたい。このプロジェクトは今回13年目を迎えるのだが、いわゆる進学校だけではなく、現地の商業高校も含まれる。2000年当時、現地職業高校は参加意欲はあったものの、英語でプレゼンテーションをすることにはかなりの努力が必要であった。しかしながら、13年の間に英語コミュニケーションに焦点をあてた英語教育カリキュラムを構築し、学校間での学びの中で、力をつけてきた。職業高校の英語プレゼンテーションから判断するに単語レベル、発音、スクリプトから判断してTOEIC700点レベルの力はあるように思われる。
大学生はそれぞれの国で、英語教員になるための学習、マネジメントの中で英語を活用する学生たちである。「訳読」から脱皮して、英語コミュニケーションの中に自分の将来の姿を描き出そうとする学生たちで、日常的な努力を行っている。そのような学生が協働プレゼンテーションを作り上げる。ただ、作成時間以外の「食事」「夜市の観光」「おしゃべり」もお互いの生活を知るいい機会となっている。もちろん英語でコミュニケーションであり、アジアにおけるEnlgishes(コミュニケーションのための英語)として、自然に使えるようになるまで習得している。
英語コミュニケ-ションが前提のイベントであることから、ホームステイ、スクリプトの
作成、衝突、解消まですべて英語で行われる。
大学生も国際福祉開発学部、国際学部、外国語学部、総合情報学部など多彩である。英語能力はTOEICでいうなら500−900点レベルの参加者である。異文化でのコミュニケーションには積極的に参加し、交流を深めていた。いずれにせよすべて英語コミュニケーションによって交流がなされた。海外でのこの交流が彼らの自信につながっていくことを願っている。
たまたま近くに座った韓国の高校の力を試してみた。
英語の授業の回数、韓国の入試についても大変明確に答えてくれた。Heterogeneous (異文化)という言葉も理解し、意識的に難しい単語を使ったが内容を理解していた。言語コミュニケーションというレベルでは全く問題が無いようにおもわれた。
このような学生にASEPは、「話せてよかった」「あのプレゼンテーション」は印象的だったなどの感覚を持たせ、自らの英語学習へのモチベーションを高める機会となっている。
3000人程度収容の体育館、とホール(200人収容)に分かれ終日取り組まれた。
それぞれ10分のプレゼンテーションであるが、シンプルでわかりやすいPPTファイルに支えられインタラクションに留意し発表していた。
高校の教員にとっても現地の教員とのやりとり、生徒の間に入って指導を行う。当然英語での指導となる。文化の違った学生の指導を併せて行いながら教員自身英語話者としての力をつけることとなる。
13年の歴史は大きい。プレゼンテーションタイム一つをとってみても10分と学生、高校生が全体をイメージしつつ発表できる時間となっている。ファイルもシンプルでわかりやすいものとなっている。
日本側はこれまで、学生たちが作ってきたプレゼンテーションを学習し、ファイル作成、シンプルにわかりやすくアンケートデータを入れ、箇条書きで表現することやさらに、「話す力」、ジェスチャー、立ち方、発する言葉の強弱などいくつかのポイントに絞って理解している。WYM,ASEPの文化として受け継がれ、効果的な英語プレゼンテーションの方法が伝統的に受け継がれている。
台湾側は担当者が毎年変わることから、ゼロからのスタートとなる学校もあり、今後の課題といえる。