ASEPのサポートを通じて

(株)内田洋行  市村 信昭

 

1. はじめに

レポート私はサポート企業の立場として、3回を除いて2000年から09年までの7回同行参加したが、期間中現地で各相手校と個別に行動するため日本参加の先生同士が情報交換する場としてホテルの部屋を提供し、自由に集合いただきその日の報告や国際交流、英語教育、情報教育など様々な話題を参加の大学から高校あるいは小中先生間での情報交換を目的とした場の提供の支援をしている。また、2004年より諸事情で通年参加できなかった先生や、他の学校が現地で何をしたかの参考となるために「ASEP現地レポート」としてその日に見聞きし感じたことを毎日メーリングリストにアップしてきた。

そのようなサポート活動を通じて、本年10年目となるASEPという活動がどのように見えたかを、国際交流活動と先生間の情報共有の観点から報告したい。

 

1. 国際交流から国際理解へ

本年の特徴は、主要目的である協働プレゼンテーション作成に加えてホスト国である台湾の歴史的背景の一部を理解するために、日本福祉大チームと立命館中高チームが台北の228記念館を訪問したことだろう。従来、開催地高雄のフィールドワーク、終了後の台北フィールドワークで夜市や故宮博物院など現地の習慣、文化に触れる活動はあったがどちらかといえば代表的な観光地でもあることは間違いなく、開催国理解としてのこのような場を訪れることは重要ではあるが、生徒・学生にとっては観光見合いになるやも知れぬことはいなめない。その点、この228記念館は台湾の戦後よりほんの20年前くらい前までの「国」としてのアイデンティティの確立と模索の推移とその狭間で生き抜いた台湾人の生の声を聞けたという意義は非常に大きい。

また、ホスト国に行ってプレゼンをし、それが自らの実績であるという一義的達成ではなく、受け入れてもらった国についてより理解するという態度を目指したことは、単に交流として相手国を利用するという意味だけではなく、その相手国を尊重するという態度も醸成する深い意味があるのではないか。

このように、ASEPは10年という継続の積重ねにとどまらず、常に進化している点で単なる国際交流という一過性イベントではない活動であり、国際交流という活動の中から国際理解というより深化した教育的意義へと深みを増していると考える。

 

2. 先生間の情報共有

ASEPに参加する日本チームは大学から高校、ときには小中までで地域も関東、中部、北陸、関西とバラエティーに富んでいる。また、先生の専門指導科目も英語、理科、情報、社会、ITを利用した教育などおよそ国際交流という活動においてのキーワードたる英語のみに特化しているわけではない。この各層各種の様々な背景を持った先生方がASEPの会期中一同に集まりフリートークとしての情報交換をする場を用意している。

通常でも地域の研究会などへ参加すればそれなりの情報交換としての交流は可能であろうが、先生方は生徒・学生がホームステイをしている分、生徒・学生の指導を一旦離れて、期間中の夜、上記様々な背景の先生との情報交換が可能な時間が用意されている。

英語学習に絞ってみても、大学教員からより学術的な指導法や理論を聞いたり、高校教員からはこれから入学してくる学生の英語教育の現状がわかったり、日頃の活動では得られないより幅広い情報が共有できるのである。

また、特高校の先生はその場で大学先生に学校での講演を依頼したり、集会でもないので、別にかしこまらずに日頃の疑問など遠慮なくぶつけられ、まさにブレーンストーミングを毎晩実施しているようで、参加のある先生に言わせれば、さまざまな先生と様々な話をすることで、ここで一年間の棚卸ができるとのことである。

このように、先生自らも昼間は相手校の海外先生から、夜は国内の参加先生から様々な情報交換・情報共有ができ指導の幅を広げることが可能になっている。

 

3. おわりに

今回の日本チームは総勢91名とかつてない規模での参加となった。そのために日本チーム同士の交流の意味も含めた決起会のあり方など新たな課題も見つかった。今年が完成形ではなくまた次の10年へ向けてと進化していくであろう。

個別で複数年参加の先生とお話もした。ネイティブでないお互いの第二外国語としての英語の位置づけでの交流のしやすさ、ホスピタリティの熱さでの交流のモデル。また、ホームステイした生徒が日々どのように感じたか、変化したかの簡単な日記様の記録の可能性など。この常に次をめざす参加先生方の問題意識の際限は実に果てしない。当然、大目的の協働プレゼンについては専門的な課題を大きくこなされているのは想像に難くない。

あまたの学校が海外研修と称して海外ホームステイと語学研修を実施することはもはや国内の学校においてはさほど特別な活動ではなくなってきている。その中で、このASEPは期間すべてを通じて様々な事に対応し、体験し、体得できることが参加生徒・学生のみならず参加先生方にも用意されているという点をもう一度認識しておく必要があろう。

また、ASEPが台湾で開催されているという意味もアジアに視点を置いたときに大きな意味を含んでいるのではないだろうか。