ASEPでの学びを発展させよう
立命館中学校・高等学校 上杉兼司
ASEPは、今年10年の節目を迎えた。姉妹関係の開催であるWYMとともに、そのデザインやコンセプトが10年の年月に耐えられるものであっただけでなく、10年を超えてもまだ重要であり、より高度なものを求めていることの証といえよう。とはいえ、これだけの期間継続させるには、初期の頃からかかわってこられた先生方のご苦労、台湾側との信頼関係がなければ成り立たない。私自身も途中で所属が変わりながらも、参加させていただいて7年が過ぎた。台湾側も日本側も、新規の参加校や新しいコーディネーターが増えてきたために、この節目に初心に返り、それらを共有することはとても重要ではないかと思う。
WYM-ASEPは教員にとっても学び合いの場
ICTの教育利用の究極の形を作り上げることから始まり、それが日本人にとって不得意としていた異文化間の交流や英語教育に波及し、参加した未来を担う若者達が社会に貢献する人材となれるように教員が知恵を出し合って作り上げてきたものがWYMとASEPであると理解している。したがって、WYM-ASEPに参加することは、教員にとっても学び合いの場でなければいけない。その点で、その日の出来事を意見交換できる、教員の宿泊所にもうけられる「バー・ヨウコウ」の果たす役割は大きい。毎年、教員がレポートを共有する意味も非常に大きい。
WYM-ASEP参加者が互いに学びあえる環境を
交流は、あくまでも相互にプラスとなるものがなければいけない。与えてもらうことだけを期待していては、発展性はおろか長続きしないことは、経験上明白である。いかにして、WYM-ASEP全体のためになるか、教育的な効果を高めることができるか、相手校のプラスになるかを意識し、学び会える環境を構築するように考えていかなければいけない。
本年は、日本側の決起集会が流れてしまった。日程の問題など様々な制約があるものの、日本からの参加校が増えてきた今こそ、その重要性を認識していく必要がある。日本の参加校は、日本を代表しているという意識とともに、日本人同士でも学びあう姿勢を養成していかなければいけない。お互いを知ることは、まったく知らない生徒が発表しているのを聴くのとは姿勢も違ってくる。また、他校の先生方を知り、他校の先生方に声をかけてもらうことも、生徒達にとってモチベーションアップにつながる。同じ目的を持った仲間という意識を作ることで、もっと多くのことが学べるのではないかと思う。
WYM-ASEPは異学年間の学び合いの場にもなっている。大学生から中学生までが同じ目的で集い同じステージに立って発表をすることは数少ない機会である。中学生のがんばりを観て、大学生のしっかりした態度を観て、感じることがなければいけない。このように、異文化の海外の生徒に観られるだけでなく、様々な世代の日本人生徒学生にも観られるという意識を、それぞれの学校にはもってもらいたいと思う。
失敗も見本になる失敗を
立命館中高のグループの特徴は、中1から高3までの6年も差がある生徒を含む異学年グループであることである。すでに、高1で4回目の参加者がいる。おそらく、この生徒は、生徒の最高参加回数記録を不動のものにするのではないかと思われる。このように、経験を持った生徒や上級生が、未経験もしくは低学年の生徒に、今までの経験を継承することができるようになっている。ネットワークのトラブル時の対応までも含めてリーダー格の生徒が細かく指示できるため、教員はリーダーに対して少しのことを伝えるだけでしっかりと受け止めることができる。また、リーダーは、複数回参加した上級生がなるものとして定着しており、それらの生徒は全体の見本となるように、昨年以上のものを作りたいと努力する。失敗の怖さも知っているが、失敗は避けられないことがあることも知っている。だからこそ、失敗をも見本となるような失敗ができるように、心構えを持つ。また、苦労をしてきているだけに、他に学ぼうという力も発揮することができるのである。帰国後京都駅で解散するときに、今年卒業する参加者が後輩達に、充実感と寂しさから涙を光らせながら来年もしっかり頑張るようにと後輩に伝える姿を今後も続けていきたい。
前任校の時代も含め、WYM-ASEPに参加する生徒は、優秀層とは限らない、自分探しが必要な生徒も含め様々な生徒が参加してきた。それらの生徒も、参加を機に大きく変わり、変貌をとげていった。海外の生徒も含めて、お互いが高めあう場であるという認識が持てているからこそ、まわりの暖かい支えによって成長できたものと考える。これらをさらに効果的にするには、やはり、日本側全体の決起集会や観光(研修)を教員も含めて協同で行うことによって、縦横のつながりをもっと持つことが大事であると考える。
<参考1>台北228記念館にて
立命館国際平和ミュージアムと交流のある台湾台北市228記念館を12月25日に訪問した。同館の運営にかかわってこられた曹欽榮氏の出迎えを受け、同氏と資料や記念品の交換を行ったあと、戒厳令下の白色テロの被害者の一人蔡焜霖氏を紹介していただき、同館の案内をしていただいた。蔡焜霖氏は司馬遼太郎氏の著書「台湾紀行」に博覧強記(はくらんきょうき)の“老台北(ラオタイペイ)”として登場する蔡焜燦氏の実弟にあたる方で、台湾の民主化や日台の民間交流に尽力を尽くされてきた方である。
同館を訪れた生徒達は、近年まで台湾が戒厳令下にあったことに驚きを感じるとともに、白色テロの被害者である蔡焜霖氏から直接お話を聞くことで、人権が蹂躙される状況とはどのようなことかを学んだ。また、日本が台湾を統治していた状況、台湾のおかれた現在も続く複雑な状況についても理解を深めた。
<参考2>KSHSのエクスカーションでクレイバーベキューに挑戦
台湾精糖内のクレイバーベキュー場にて熱した石で鳥などの食材を蒸し焼きにするクレイバーベキューを体験した。連続参加する生徒のために、毎年違った仕掛けを考えてくれるようになっている。