Conflict collaboration

福井商業高校 今村仁美

 

Suggestions

 @台湾側とのコンセンサスをとるのが遅れ、予定が大幅に遅れた。メールやチャットを用い、頻繁に連絡をとるべき。

A3校でコラボをし、多くの先生が関わっていたことで指導方針にずれがあった。リーダーを決めるべきだった。

Bパワーポイントファイルの見せ方に工夫が足りなかった。「ユニバーサルデザイン」を目指したものをつくっていくべき。(文字を大きく、絵や写真にも文字を、など)

 

今回のASEPには、1年生4名が参加した。福井商業から4名というのは例年に比べると少ない数である。しかし当初、驚くべきことにASEPに参加したいという生徒はほぼ0であった。英語を学ぶのに、なぜ母国語が英語でない台湾に行く必要があるのか、行事が詰まった怒涛の2学期が終わった後になぜ他の予定を詰めてまで参加すべきなのか、その意義を生徒が理解していなかった。このピンチを救ったのが田嶋先生で、1年生の教室に来てくださり50分間ASEPに懸ける思いを語ってくださった。その結果この4名の参加が実現した。

4名全員が台湾の生徒と初めて協働してプレゼンテーションをつくるということもあり、台湾側の先生とのメール交換を早めに始めた。例年通りのスタイルで、ASEPでは台湾主導で作成を進めることを伝え、テーマについて見解を一致させたのちにプロジェクトをスタートさせた。今回は生徒の自主性とかかわりを大事にしたいという教員側のアイデアで、生徒のリーダー同士で話し合いを進めさせた。しかし、メールのレスポンスが非常に遅く、生徒たちは大変焦れていた。私自身も一日に少なくとも2通はメールを送り、催促した。が、今回台湾側は2校参加ということがあり、2校がそろってミーティングができる日が限られていたため、台湾側の意見の集約に非常に時間がかかってしまっていたようだった。さらに、出発が近付いてきたある日、メインテーマとして扱っていたトピックを変更するというメールが来た。真剣に取り組んでいた生徒は意気消沈し、自分たちがやったことを変えるのに抵抗を示した。しかし、一つのプレゼンを作り上げるにはすり合わせも必要だということを伝え、今までに調べたことを踏まえてなんとか新しいトピックに切り替えをさせた。

台湾に着いて、最初に驚いたのが、スケジュール上でのプレゼンテーション練習の時間が非常に限られていたことだった。台湾に着いて3日目、心配していたことが的中した。総勢15名でのプレゼンテーション。言葉も拙い生徒同士のすり合わせ。予定時間に準備が終わるはずもなく、延々と準備は続いた。限られた時間の中で、意見が英語でうまく伝えられずに、焦りや不安から涙をこぼした生徒もいた。自由時間に充ててあった時間を削って練習し、夜10時まで疲れた体に鞭をうって練習に励んだ。一度作ったプレゼンシートや内容を削り、「せっかく覚えたのにまたやり直し」と泣きそうな顔で練習を始める生徒もいた。教員間でも、今回は6人の先生が関わっていたこともあり、それぞれの思惑がぶつかって涙をながした先生もおられた。今思えば、教員も生徒も全員が「よいものをつくりたい」と願っていたからこそ起こった “conflict” だったと思う。

当日、時間もぎりぎりで一番よいものを出せたわけではなかったが、特に印象に残ったのが生徒の様子だった。終了後、生徒と話をする中で、一人の生徒が涙を見せた。普段は涙どころか笑顔さえも見せない生徒だったので、私はとても驚いた。彼は、「台湾に来てよかった。みんなに会えてよかった。ありがとう、と言いたい。」と素直な気持ちを語ってくれた。また、他の生徒からも「感謝感激雨嵐です。」と口々に感謝の言葉を口にしていた。私は、生徒が英語だけでなく人に感謝する心をもてたことを嬉しく思った。

さらに、驚いていることがある。それは、毎日英語の授業をしている中で、ASEPに参加した生徒の成長がめざましい、ということだ。私の授業では、毎時間簡単なトピックについて英語で話す時間を設けている。ASEPに参加した生徒は、1つのトピックについて、アイコンタクトを取りながら自分の意見をたくさん話すようになってきており、その変化が目に見えてわかるようになってきた。他の生徒も、彼らの姿に大変刺激を受けている。彼らは、ASEPでconflictを体験する中で、何かを伝えたいときにはたくさん話さなければならないことを学んできた。そして、どうすれば聞いてもらえるか、理解してもらえたときにどんなに嬉しいかを身をもって経験してきた。現在も台湾の生徒とのメール交換やチャットが続いており、英語を学習する生徒の十分な動機になっている。

今回のASEPでは、生徒自身が自分たちの力で何か一つ成し遂げた達成感が大きな自信になったようだ。そして、conflictの末に台湾の生徒と成功を分かち得たことで、絆が生まれたと思う。今後、この交流を継続させることを課題としていきたい。