国際交流の共同作業によるプレゼンテーションの作成
1 ASEP2007個人参加の概要
私自身は個人的に、ASEP2004より継続的に参加しており、四年連続でクリスマスを高雄の街で迎えることになった。今回も、日本チーム全体のスケジュール調整や、一部の送迎やホテルなどの手配のお手伝い、さらに台湾側との確認作業などを担当させていただいた。一方で、個人参加として日本チームに加わった生徒たちと、交流相手校によるプレゼンテーション作成を見守ることになった。
2 プレゼンテーション作成の流れ
私が関係したプレゼンテーションチームは、台湾CCAFPSの生徒八名と、日本の生徒六名の混成チームだった。このチームのプレゼンテーション作成から実施までのプロセスは以下の通りであった。
テーマの決定(日本提案を台湾が了承)
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スケジュール作成(日本が大枠を台湾が細部を)
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調査研究(それぞれに調査)
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発表内容細部を確定(双方で協議すりあわせ)
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台本と提示データ作成(台湾が作成し日本が確認)
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リハーサルとブラッシュアップ(現地で共同作業)
このように、台本と提示データ作成までのプロセスを、事前にほぼ完了させていた。このことが、最終的に完成度の高いプレゼンテーションが実施できた大きな要因だと考えられる。ASEPにおける日本チームの滞在期間は通常は数日間で、そのうちプレゼンテーションの準備に当てられる時間は大して多くはない。短い時間で何をするのかということを考えれば、やはりリハーサルに多くの時間を割くことが、望ましいと考えられる。事前のメールでの打ち合わせで、流れを確認して、今回は台本と提示データに関しては、会うまでにほぼ完成させることにした。台本を双方が確認して、内容を了承した上で、あとは実際に会って練習するだけというに流れになった。
現地での練習の指導に関しては、台湾の担当の先生一人にほぼ一任するかたちで、日本の先生たちや台湾のその他の先生たちは、簡単なアドバイスをするだけにとどめた。複数の学校の生徒たちが混成でプレゼンテーションを行う場合、当然担当する指導者も二名以上になることが想定される。このような場合、得てして「船頭多くして、、、」という状況に陥りやすい。基本は生徒たちの人間関係調整力に任せ、教員の指導は必要最小限で、しかも主に一人で行い、他の教員がなるべく口出ししないことが重要である。短時間で効率的にブラッシュアップを行うためには、指示系統がはっきりせずに生徒が混乱したり、複数の指導者間での意見の食い違いを調整したりするといった場面はなるべく回避したいからである。
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プレゼンテーションで配慮すべきこと
ASEP2007のプレゼンテーション大会を見て感じたことは、この数年間でプレゼンテーションのレベルがかなりアップしているということである。しかし、これに満足することなく、さらに良いプレゼンテーションを目指したい。 そこで、今回のプレゼンテーション大会から見えてきたことを、配慮すべき点という視座で考えると、オーディエンスの分析と、プレゼンテーションの構成というポイントが浮かび上がってきた。
まず、第一に配慮すべきことはオーディエンスについてである。これは、プレゼンテーションを指導する際には、大なり小なり含まれているものである。しかし、実際にはオーディエンスへの配慮が十分行き届いているプレゼンテーションというのには、めったにお目にかかれない。オーディエンスに対して押し付けがましくならないように、より深く分析すべきである。具体的な方策はさまざま考えられるし、また、ケースによって使い分ける必要もある。ただ、総じていえることは、プレゼンターの主張が聴衆に届き、しかも、聴き手が楽しめたり、感動したりするプレゼンテーションを目指したいということである。そのためには、どんなときもオーディエンスを主体に考えることが大切ではないだろうか。
第二には、どのような構成でプレゼン行うかということである。プレゼンテーションでは、最も伝えたいことを明確に印象付ける工夫が必要である。そのためには、ただ単に提言を最後に持ってくるというだけでなく、ASEPのレベルであれば、さらに一工夫ができるのではないだろうか。換言すれば、プレゼンテーション全体の流れが平板なものがまだ多いということである。プレゼン全体の構成から考えて、どこで盛り上げて、どこでオチをつけるのかといった雰囲気の抑揚を十分吟味したい。
このレベルでプレゼンテーションに携わっていれば、生徒たちは良質な分析力と構成力を身につけることができるだろう。そして、いろいろなプロジェクトの重要な局面でこれを発揮することができるだろう。
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今後の展望と課題
ASEP2007の成功を見るにつけ、WYM2008とASEP2008への確かな足がかりを感じた。脈々と受け継がれていくノウハウは確実に進化し、伝播していると思う。また一方、より地に足のついた取り組みとするためには、さらに効果的に海外と情報交換できる方策や、評価に関する問題、事後データの共有方法などが課題でないかと思われる。そして、当面の課題としては、事後の振り返りをできるだけ早めに行い、生徒たちにとって、また、我々教員にとってのこの経験を、ただの良い想い出として残すだけにとどめず、各々が自らの今後に活かせるものとしたい。