ASEPにおけるICT活用と国際的コラボラーション

福井県立福井商業高等学校  田嶋 基史

1 はじめに

1999年から始まったASEPも今回で7回目となる。我々の国際交流のユニークなところは、英会話ができる人間が率先して国際交流を行うというものでない。 伝えたいメッセージを強烈に持っている人間が、イニシャチブを取って進めている点である。

メッセージを伝える方法は「英語」という言語だけではない。もちろん「英語」ができるにこしたことはない。しかし一番大切なのは、「コミュニケーションしたい」という気持ちである。映像や画像は時には、言葉よりメッセージを伝えることができる。最近はPCやマルチメディア機器の性能が向上し、購入しやすくなった。こういった機器を利用し、ICTのスキルアップを図ることで、英語ができないとコミュニケーションができないといった既成概念を打ち破っていったのである。コミュニケーション無くして、異文化理解はありえない。

ASEPでの国際交流の取り組みは、生徒達も教員達も言葉の壁をコンピュータやマルチメディア機器をフルに利用することで乗り越えてきた歴史でもある。

 

2 国際交流のハードルが低くなった理由

(1)インターネットの普及

また世界と我々を身近に感じさせてくれる情報革命が1990年代前半におこった。それは、windows95の発売とインターネットの普及である。「常に世界と繋がっている。」インターネットはそんな感覚を与えてくれる。国際郵便(Air-Mail)はいつの間にか電子メールに代わり、コンピュータでメールをチェックし、交流相手との手軽な挨拶が当たり前になっていった。

(2)ネットワーク環境の変化

現在日本では、ADSLや光ファイバーなどのケーブル敷設が整い、映画や音声のファイルが簡単に自宅でダウンロードできる環境になった。

(3)コンピュータの性能の向上

コンピュータの処理速度も格段に速くなり、10年前とは比べのにならないくらい使いやすいツールになっていった。マルチメディア(ビデオやデジタルカメラ)を利用して、動画・画像ファイルを作成することが素人でも可能になり、相手に明確に表現することができるようになった。

 

3 国際交流を進めていく中で効果的な方法

(1)MLの活用

我々の国際交流は、テーマを決めた後、相手とコラボレーションを行ない、プレゼンテーションファイルの作成していく。したがって、距離の埋めるにはメールでの意見交換が効果的である。またメールでの意見交換の方法がうまくいかないと議論が深まらず、

なかなか結論まで持って行くことができない。そのために、教員側もMLに流れている内容を把握し、MLで議論がスムーズに流れていくよう、投稿する内容にアドバイスを行うことも大切である。また事前にコラボラーションする相手国の担当の先生と今何について議論させていくのか事前に打ち合わせをおこなうことも必要である。2005年のASEPは、多くの参加国があり、生徒同士のメーリングリストも複数立ち上がった。コラボレーションする学校のMLと全体で議論して決めていくMLの棲み分けを明確にしていき投稿する内容を十分に吟味しなければならない。

(2)WEBの活用

国際交流を通じて海外の生徒と知り合うことは、その生徒を通してその国の歴史や文化に触れていくことを意味している。しかしASEPでは、会ってから別れるまで滞在する期間はせいぜい3日〜4日程度である。自分の思いや考えを伝えるにはあまりにも短い。

心情的な交流を深めていくには時間が足りないのである。我々はもっと現地での交流を有意義にする方法はないか模索していった。そこで考えたのが「WEB上に事前に参加する生徒の情報を掲載すること」である。これにより相手を常に意識して交流できる準備を整えることができる。本校ではASEPWYMなどの国際交流のときには、必ず、参加するメンバーのプロフィールを作成し、WEBで紹介する。プロフィール内容は、自己紹介文、自分の写真、家族の写真などである。もちろんサイトについては、パスワードをかけていく。これにより相手にこちらの様子を少しでも知ってもらうことでより親しみをもって交流を進めていくことができるのである。

(2)テレビ会議の活用

 ML上での議論が活発となるにつれ、文面では伝えきれない行間を埋める手段としてテレビ会議を利用すると効果的である。最終的には、相手の顔をみながらプレゼンテーションの内容を組み立てていくのである。

 テレビ会議を利用する上でネットワークやカメラなどの設定をいかにスムーズに行うかが大切な要素となる。またいざ始まってみると音声が聞こえなかったり、画像が上手くおくれなかったりとトラブルを抱えることも少なくない。自分側の環境を整える(スピーカー、マイクの調整)のはもとより、相手側の回線状況(データ通信速度の速さ)などを考慮して会議をすすめていくことも大切である。

 テレビ会議では、日常会話のようなスピードや声の大きさでは聞き取りにくい場合があるので、ゆっくり、はっきりしゃべりながら内容を確認する必要がある。またどうしても聞き取りにくかったりノイズが多くてテレビ会議でのやり取りが難しい場合は、映像を止めて音声だけで進めたり、チャット機能を利用して、意見交換をおこないながら

議論していくことも考慮しなければならない。

 

 

4 まとめ

夏にはWYM、そして冬にはASEP1年間を通して国際連携を意識した交流をおこなっている。そして必ずPPTファイルやスクリプトまたプレゼンテーションの動画ファイルなどは、講義や授業のコンテンツとして記録され、共有の財産として蓄積されている。生徒達は、先輩達の姿を自分の将来の姿にオーバーラップさせ、モチベーションを高めていくのである。ICTを活用することで、言葉の壁が低くなり、諸外国の生徒達とのコミュニケーションやコンテンツの作成がスムーズに展開していく。国際交流のきっかけとしてICTを利用しながらコミュニケーションをおこない、コラボレーションを深めていく。このルーティンを繰り返すことでお互いの異文化理解が深まり真の国際交流に発展していくのである。