1.ASEP2005へ参加して NTTコミュニケーションズ 鈴木 実
1.1 はじめに
ICTの教育利用が始まったころから、初中等教育の領域で仕事をさせていただいてきたが、その中で現場の先生のさまざまな活動や声を聞き、海外の実状を見たいと思ってきた。特に、ICTの活用と英語教育について諸外国がどのように取り組み、成果を挙げてきているかを現場の目線から見てみたいという希望を持っていた。今回、ASEP2005への参加の機会をいただくことができ、大会参加を通して感じた台湾の教育や日本の教育への期待について述べることとする。
1.3 台湾の教育に思うこと
今回の訪問を通じて一番印象に残ったことは、保護者が積極的に教育に参加しているということである。今回接触した地域だけなのか、台湾全体がそうなのかを判断することはできないが、保護者が自分の子どもの教育に対して、金も出すが口も出すという姿勢は納得できるものである。また、それを受け入れる学校にも好感が持てた。子どもたちの教育に対して、学校も親も(さらに行政も)みな責任を持つ、そのために各自ができることをやるということは、ある意味当然のことであるがそれがうまく回っているように感じた。
ICTの活用や英語教育そのものに関しては、今回触れる機会がなかったため、別の機会に期待している。
1.4 日本への期待
各チームの発表を見ていて、ごく一部の非常に優秀な生徒の存在を除けば、日本の生徒の英語能力も他国の生徒と同じレベルでがんばっていたということが印象に残った。日本人の英語能力について、批判的な意見を聞く機会が多いが、このような学生の存在を見ることができ、悲観することはないかもしれないと感じた。鈴木は教育者ではないので、方法論について論じることはできないが、学生に対して、動機付けとそれを活用する機会を与えることができれば、手取り足取り指導しなくても、英語によるコミュニケーション能力を身につけていけるのではないかと感じた。その意味で、ASEPという活動が継続的に実施されている意義は大きい。残念なのは、この活動に参加する機会を得られる生徒が少ないということである。しかし、一方でははっきりとした動機付けられた生徒が参加しているため、ASEPという活動が継続できているのかもしれない。
日本における英語教育においても、受験以外に英語を活用する機会を増やしていくことができれば、変わっていくのではなかと強く感じた。また、実施するためにはさまざまな課題があると予想されるが、今回を含めこれまでASEPに参加した日本の子どもたちが、その後どうなっていったかといったデータを蓄積することにより、日本の英語教育の方向性を示すことができるのではなかとも感じた。
1.5 おわりに
フライトのトラブルのため、残念ながら初日の学校訪問に参加できず、台湾の学校を直接見るという目的は達成できなかったが、ASEP2005に参加することができ、台湾およびアジア諸国の教育に触れることができ有意義であったと思う。
ASEPに参加した生徒・教員、宿泊したホテルの従業員、屋台・土産物屋で働いている人々と接して、台湾に住む人がみなマルチリンガルではないかと錯覚していたが、帰国のためにホテルから乗ったタクシーの運転手が台湾語しかつかないことがわかり、ちょっと安心して帰国したところである。とはいえ、今後、さまざまな面でグローバル化が進む世の中で活躍していかなければならない子どもたちに対して、それに対処できる学習機会を作っていくことが我々の今後の課題ではないかと感じている。
今回、ASEP2005に参加する機会をいただいた関係各位の方々に感謝するとともにお礼申し上げる。