13. ホームステイの動きと学生・生徒の変容
大阪市立扇町総合高等学校 池田 明
13-1 滞在中の動き
台湾の高雄市で開催されたASEP2005への日本からの参加者は、一部を除いて12/22〜12/27の五泊六日の旅程であった。内、到着日は高雄市内のホテルに滞在、26日からは、台北市に移動し一泊二日の社会見学を実施した。したがって、ASEP2005におけるホームステイの日程は、12/23〜26の三泊四日であった。
12/23早朝、同日夕方着の大学生を除く学生・生徒が滞在先のホテルロビーでホストファミリーと待ち合わせ、ホストによるピックアップでホームステイ期間が開始された。ホームステイの経験がある者は少数で、多くはホストファミリーとの対面前から緊張気味であった。これから3日間は、ここまで同行した仲間とも一旦別れて、ホストファミリーと行動を共にすることになる。
23日は、ホスト先の学生・生徒が通う学校へ登校し、その学校の授業を一日体験した。歓迎会や懇親行事をしてもらったり、実際の授業に参加させてもらったりと、普通の観光旅行では絶対に不可能な経験をさせてもらえた。また、同じ年代の多くの友達と時間を過ごすことで、緊張もほぐれていく。その後、夕方まで翌日のプレゼンテーションの打ち合わせなどをしながら学校で過ごし、各ホストファミリー宅へ帰宅。ここで初めてお世話になる家族全員と顔を合わせることになる。
24日は、朝ホストファミリーに送ってもらい三民高校へ集合、ASEPプレゼンテーション大会の本番と夕方からはクリスマスパーティーが開催された。夜、パーティー終了予定の21時過ぎにホストファミリーにピックアップしてもらい帰宅。夜遅いが、プレゼン大会とパーティーの余韻そのままに、ホストファミリーと夜市に出かけた者も多かったようだ。
25日は、ホストファミリーが一日観光に引率してくれた。基本的な観光コースの提案はされてはいるが、各家庭ごとの行動なので、学生・生徒の希望にも柔軟に対応してもらえた。愛河や旗津などの観光名所を巡ったり、買い物を楽しんだりした。
26日朝に、ホストファミリーに送られて、高雄国際空港の国内線ロビーで待ち合わせとなる。ここでホームステイプログラムは終了。三泊の間に心も通い合っているので、例年のことながら涙のお別れとなる。この日は平日の月曜なので、ホストファミリーの方々は学校や仕事に遅れるのを承知で時間を割いて来てくれていた。
13-2 リラックスした交流体験
ホームステイの滞在中に何か困ったことはなかったかとの質問に対して、生徒たちの答えは異口同音に「特にナシ」であった。それでもということで、「いちばんこまった瞬間といえば」と聞いても、「風呂場のシャワーの温度が調節しにくかった」とか、「次々と食べるものを用意してくれるので太った気がする」とかいう他愛のないものしか出てこない。多くの学生・生徒はリラックスした状態で実のある交流体験ができていたようだ。ホームステイによる発見や学びの体験を生徒たちの感想からピックアップしてみることにする。
13-2-1 ホームステイ中に感じたこと見つけたこと
挨拶の習慣が日本と違うので戸惑った。特に食事のとき、家族で食卓を囲んでいてもいつ食べ始めてよいかがわからなかった。みんなで「いただきます」ではなく、お父さんが食べ始めるのを待つ感じだった。その他の場面でも、挨拶の仕方、特に挨拶のタイミングが違うのに驚いた。
コンビに買い物に行くと、店内で飲食している人がいてびっくりした。あと、買った品物を入れる袋をもらうと有料だった。この有料の袋、日本のものより厚手で頑丈だった。
プリクラの紙がツルツルしていた。
タクシーは怖かったけど、楽しかった。ただ、運転手さんに英語が通じないので困った。
日本では高校生があたりまえのようにアルバイトしているが、これを説明するのが難しかった。jobやworkと言うと、職業にしていると勘違いされるし、なぜ働くのかと聞かれて困った。
臭豆腐は勘弁して欲しい。
日本から参加した他の学校の人たちともホームステイの感想を語り合って楽しかった。
学校訪問をしたとき、サイン攻めにあって、まるでアイドル気分だった。
ホストファミリーの皆さんにとても感謝している。心からもてなしてもらっているのがよくわかった。感動した。
これからも、交流を継続させたい。
13-2-2 コミュニケーションの力について
事前のアンケートでは、ホームステイ中に不安なこととして、「中国語は理解できないし不十分な英語力だけで意思の疎通が図れるかどうか」というのが多かった。事後にアンケートや聞き取り調査をしてみると、「思ったよりスムーズだった」という意見がほとんどだった。互いに交流を目的として設定されているホームステイなので、思いのほか垣根は低かったようだ。
語彙力が不足していて、自分の考えがうまく英語で表現できない場合は、身振り手振りで伝える・漢字で筆談する・ノリで意思疎通する、というような感じで乗り切ったようだ。翻訳機や電子辞書、筆談のための紙とペンはあったほうが便利なようだが、最終的には伝えたいという強い気持ちとTPOに応じて臨機応変に行動することで何とかなるというのが参加生徒の共通した意見である。
日本も台湾も英語はともに外国語である。にもかかわらず、ASEPに参加している台湾の学生・生徒の英語表現力は総じて日本の同年代の者よりすぐれていると言えそうである。このコミュニケーションツールとして英語力にインスパイアされ、もっと英語をしゃべれるようになりたいと思った生徒も多かったようである。