継続する国際交流プロジェクトを支えるネットワーク

石川県立鶴来高等学校  林 道雄

 

 今年もASEPの日本側スタッフの一人として運営に関わることが出来、非常に嬉しく思う。10年以上という長きにわたりASEPやWYMという国際交流プロジェクトが続いていると言う事は非常に素晴らしい事で、これまでにこのプロジェクトに携わった多くの人達の尽力と熱意、そしてネットワークが有ってこそだと思う。プロジェクトを運営し継続させていく為には、ネットワークは、そのプロジェクトに適した活用をしなければならない。私はASEPやWYMには、幾つものコミュニケーションの形態が有り、各々のコミュニケーションの形態に適したネットワークの活用法が有ると考えている。

第一の形態は、異なる国、異なる学校の参加者のコラボによるプレゼンターとしての議論と理解のコミュニケーションである。この形態は、コラボする各学校が主体となるものであり、ネットワークとしては、スカイプやフェイスブック、掲示板やメーリングリストなどを通して、各学校の設備環境に合わせた活用が行われている。スカイプやフェイスブックは、その性格上、一対一のコミュニケーションに向いているため、相互の親睦には有効だが、conflictの過程も含めた全体としての議論や確認、集約には、掲示板やメーリングリストが適している様である。

第二の形態は、プレゼンターであり、他のプレゼンのオーディエンスであり、或いはスタッフである、 ASEPという1つのプロジェクトの参加者としてのコミュニケーションである。一般的なプレゼンテーション大会では、先ず「課題研究」や「ビジネスアイディア」などの「テーマの発表」が最終目的として有り、発表者や参加校にとっては、それを如何に発表したか、それが如何に評価されたか、に主眼を置くことが多い。大会を運営する側としては、主催者と、審査員やスタッフ、発表者などとの連絡や調整といった事務的な関係は重要だが、発表者同士という関係についてはあまり意識しない。主催者側は予定通りに進行すれば良く、発表者側は自分の番が来るまで別の場所で練習し自分達の発表が終われば直ぐ帰る、という事になりがちである。しかし、ASEPでは、「テーマ」も勿論大切だが、参加者同士が相手を意識し、お互いに「伝える」「伝わる」ことを重要に考えているため、運営する側としては、学生生徒、教員も含めた「参加者全員のコミュニケーション」を演出する必要が有る。そのためのネットワークツールとしては、自分達のコラボ活動だけではなくプロジェクト全体を誰もが俯瞰出来る様にする為の、WebPageによるファイルサーバや画像掲示板、メーリングリストなどが使われている。特に今回は、日本チームの現地での結団式が復活し、各校の生徒が籤引きでシャッフルされテーブル席に着いて交流が行われたという非常に嬉しい出来事が有った。この結団式自体もそうだが、結団式や当日夜のパーティの日本チームの出し物に関した案内や打ち合わせ等をメーリングリストで行えた事も、第二のコミュニケーションへの意識付けとして有効であり、当日のプレゼン発表の会場の観客の様子にも、パーティの出し物の練習や実際のパーティでも、その効果は顕れていたと思う。

第三の形態は、体験を次へと伝えていくコミュニケーションである。終了後、参加者達が各学校で体験を文章、画像、動画などでリフレクションし、次回の自分自身、或いは次回の参加者へと引き継ぐことで、継続する国際交流が成立している。これは、各学校単位のみならず、プロジェクトの運営としても非常に大切である。様々な形態のコミュニケーションを通して各学校に残されている貴重な資料を散逸させる事無く集めておき、必要に応じて何時でも簡単に閲覧出来る様にしておく事で、新しく参加する学校や異動などにより担当教諭が交代した学校でも、プロジェクトの理念や全体像、ノウハウなどを理解する事が出来る。これには、民間のサービスや学校所有のサーバではなく独立したシステムの方が、リスクが少なく柔軟性が有るという意味で好ましい様に思う。

私は2001年よりサーバにWYM/ASEP運営のサポートサイトを開設し、ウェブページとメーリングリストや掲示板を組み合わせたものを基本に、多言語に対応したブログやSNS、ファイルサーバなど、前述した様々なコミュニケーションの形態に合わせて新たなツールを構築しながら運営してきた。今回は、これまでに使用して来たツールとファイルを再整理し、サーバに国立情報学研究所が開発したNetCommons2を導入し、メーリングリストと組み合わせて運営してみた。NetCommons2は、参加者やグループの管理が比較的簡単に出来たり、キャビネット、掲示板、アルバム、動画配信など、基本的なモジュールが揃っており管理者のみでなく参加者も自由に自分や自分のコラボグループのスペースに必要に応じて設置する事が出来たりする、非常に使い易いソフトウェアである。基本的な部分がしっかりしていながら柔軟なカスタマイズが可能で、多言語にも対応している。参加者からの反応も悪くないので今後も色々と進化させながら使ってみようと考えている。ネットワークでは、常に新しいツールが現れては消えて行くが、ツールの性格を見極め、これからも試行を重ねながら、より良いネットワークを活用したASEPやWYMの運営のサポートを研究して行きたいと考えている。

 

 

サポートページの中の、ASEP2010のビデオアーカイブ。

一画面で100まで表示出来る様にしてあり、今回は現在までに54の動画がアップされている。

また、サイト全体はSSLでセキュリティ対策をしている。