持続発展的な国際交流活動としてのASEP

  大阪夕陽丘学園高等学校 山本 英樹

 oyg.yamamoto@gmail.com

 

はじめに

今回で2度目の参加となるASEPでは初回とは異なる体験をさせて頂いた。今夏のWYMでの交流も加えると、3度目の交流活動となる。前回同様、異文化交流として学ぶ点が多い事も然る事乍ら、今回のASEPでは、初回参加とは異なった学びの点が挙げられる。今回のASEPでは一連の交流活動を把握していた点で前回とは異なり、反省を踏まえた上での取り組みが可能である様に思えた。また相手校との関係が持続的で関係基盤が築かれつつあり、今回の訪問は多くの生徒や教員にとって「出会い」ではなく、「再会」となる点で違っていた。更に今回際立った点としては、教員間において、相手校と合同で学校の垣根を越えたcooperative teachingの機会があったように思えた。今回はこの様な点に着目したい。

 

前回のASEP/WYMを踏まえて

前回のASEP終了後、相手校の先生との話し合いで反省点として事前準備の重要性が挙げられた。その点を踏まえて今回は全体テーマが設定されるとすぐにミーティングを開き、サブテーマの設定に取り組んだ。何をどう準備してよいのか分からなかった前回とは異なり、昨年ASEPに参加した生徒は主体的に動いていた。また個々にセリフの練習に取り組んでいた様子であった。理論的見地から見解を述べれば、前回の反省を基に活動計画を立て、取り組み、自己評価していく点でメタ認知ストラテジーを存分に活用し、自律学習を促進する活動とする活動と捉えられ、その利点は大きい。ただ、すべてが順調であった訳ではない。こちらのサブテーマと異なったサブテーマを相手校が設定して進めていたり、メールでのやりとりが上手くいかなかったりしていた。この点がまた次回への反省点となるが、持続的なプロジェクトは前回の反省点を踏まえて発展させる機会がある点でより完成度の高いプレゼンテーションへと進化させることを可能にする。

 

ラポール関係の構築

 現地でのリハーサルでは直前にセリフの変更や交代があったものの、前回よりも現地では合同パフォーマンスの練習に取り組めた。相手校が準備してくれた部分が大きく、衣装やプラカード等は持ち易い様に、取っ手をつける等、細部に至るまでとても配慮してもらった点には感謝している。今回はプレゼンテーション改善のための交渉というよりも、むしろ相手の意見を尊重し合うような融和的な雰囲気であった。また本校では中国語が話せる生徒が日本人生徒と台湾人生徒の架け橋の役目をしてくれている。その生徒の助けもあり、交流活動を重ねることによって年々双方の学校生徒の距離が近くなっている様である。これによってラポール関係が生まれ、プレゼンにも一体感を持つようになってくる様に感じた。そして、「中正に迷惑をかけないように練習をちゃんとしよう!」と言った、相手への気遣いの気持ちを表していた様子であった。この連帯感は一過性のプログラムでは存在しないだろう。

 

多数の教員が参加する取り組み

 今回のプレゼンテーションには相手校から多数の教員が参加していた。プレゼンで使われた絵を描いたのは美術の先生で、裏方の先生まで含めれば多数の教員が関与している。本校からも今回は前回より1名増員して、英語科教員が2名参加している。したがって、リハーサル時にはこれらの教員が様々な角度からフィードバックを与える事になり、cooperative teachingの実践であった。生徒にとっては豊富なフィードバックが得られる恵まれた環境でリハーサルを行えたように思われる。教員としてはこの様な環境改善を狙いとした、教員間における連携の重要性を再認識させられた。cooperative teachingの場の提供をしてくれたのがこのASEPであり、持続的なプログラムであるからこそ、過去の実績に基づいて様々な教員が関与するようになってくると感じられた。

 

さいごに

 概してプログラムの持続発展性について3点に絞って省察した。生徒の自律学習にとっても、生徒間でラポール関係を築くことにおいても、また教員のcooperative teaching環境改善にとっても、その機会を提供してもらい、今後の発展に取り組む機会を与えてもらえたのは大きい。オンラインとface to faceのオフラインの相乗的な学習法であるブレンディッド・ラーニングの良い一例として、この取り組みの効果に期待する。今後もこのASEPに参加し、より良いプログラムへの改善へと努めていきたい。またこのプログラムを可能にしてくれた諸先生方には感謝の意を表したい。