ASEPを楽しむ、ASEPでもがく、ASEPはつづく

南山国際高等学校 西 亮

ryo248@yahoo.co.jp

プロジェクトの流れ

10月、交流相手校が決定

11月上旬から交流相手校の担当教員とメールで連絡を取り合う。

11月中旬、相手校の教員とSkypeで交流。生徒同士もFacebookを利用して交流を始める。

11月下旬から相手校、本校とも定期テストにより、交流が滞る。

12月上旬、プレゼンテーションのトピックがほぼ決定する。プレゼンテーションのアウトラインについて、交流相手校の教員と何度もやりとりをする。

12月中旬、生徒同士のskypeによる交流。それまではFacebookが生徒同士の主な交流手段であったが、skypeによるface to faceコミュニケーションを知り、ほぼ毎日skypeで生徒同士交流。また各校でアンケートを実施。

12月下旬、台湾へ出発。樹徳家商にて3日間プロジェクト準備

 

コラボレーションの環境が断然よくなった〜Facebook, Skypeを活用した生徒間交流

 昨年と明らかに違う点はFacebookの活用だ。教員が特別指示を出さなくても、台湾の生徒も本校の生徒もFacebookを利用して、自己紹介、日常的なコミュニケーション、プレゼンテーションのトピックについての意見交換を自発的に行っていた。

 プレゼンテーションの準備には、相手校の担当教員、サポート役の別の教員、生徒5名、そして本校の生徒5名、教員としての私が関わっていた。教員同士で最初のきっかけづくり、プレゼンテーションのトピック、アウトラインの最終決定を行ってはきたが、台湾の生徒がそれらの決定を本当のところどのように考えているのか、どのくらい関心をもっているのかを生徒同士のFacebookによる意見交換によって知った部分もある。

 台湾の生徒B君が、ASEP期間中に誕生日が来ることを知り、本校の生徒は内緒で誕生日プレゼントを用意して持っていったというような微笑ましいエピソードもある。

 またFacebookとは違い、skypeの利用はそれまで生徒にとって日常的なことではなかった。一度skypeを利用した会議を実施したところ、会話としての英語力に長けた本校の生徒は、実際に相手を見ながら話が出来る点に魅力を感じ、それ以降、毎日のように相手校の生徒と時間を決めてオンラインミーティングを行うようになった。

 メールだけでなく、FacebookSkypeという新たな交流手段ができたことで、台湾に行く以前に、コラボレーションの相手との人間関係をより良いものにすることができるようになり、台湾滞在中の共同作業がより円滑になったと思う。

 

コンフリクトはあって当たり前

 共同作業が円滑になったとはいえ、やはりコラボレーションにおけるコンフリクトは付き物だ。限られた時間の中で、生徒同士のコンフリクトもあれば、教員同士のコンフリクトもある。プレゼンテーション全体のトピックとパワーポイントのスライドの内容がずれていないか。私達がとりあげた「問題」に対して、掲げた「解決手段」は最良のものであるかどうか。細かいこともある。ある英単語の使用について聴衆が理解しやすいものなのかどうか。スライドに載せる文が多すぎはしないか。挙げたらきりが無いほど、多くの点で互いに意見を出し合い、「落とし所」を探っていった。うまくいった点もあるが、なかなか最後まで納得できない決着点(?)もあった。「落とし所」が見つからない場合、経験を持った教員がどう決断をせまるか、どう決断するか、今回特に考えさせられた。

 ASEPを終えて、来年に向けてどうするか、現在思いつく改善点を記したい。

(1)相手校の教員に対してうまく英語で意見が言えないとき、本校の生徒が通訳して伝えてくれたことが多かった。しかし私としては指導教員としてさらに英語活用能力を磨き、自分の言葉で思いを相手に伝えるようになりたい。

(2)特にWYMに参加した生徒は、効果的なプレゼンテーションとは何かを良く理解してくれていた。そのためなかなか英語で言えない私の考えを、うまく通訳して相手校の教員、生徒に伝えてくれた。やはり単発的な参加でなく、継続した参加、先輩から後輩への経験の受け渡しができるように生徒参加を企画していきたい。

(3)影戸先生が事前に示してくださった、効果的なプレゼンテーションをするための指導教材をさらに活用するとよかった。初めてWYMASEPのプレゼンテーションを体験する者に対して、早い時期に具体例を示して、より効果的に聴衆に訴えるにはどのような内容で、どのようなスライドを提示すべきか、またどのように聴衆に伝えるか、プレゼンテーションの目的意識を高く持つように仕掛けを工夫する必要があったのではないか。この内容を交流相手校の教員、生徒にも徹底させていきたい。

 

苦労(あるいは、もがき)から生まれる芽〜ASEP2011に向けて

 内田洋行の市村氏のメールにこのような記述がある。「高校・大学と今年は先生方の指導の観点の置き場所が異なっているらしく、いかに相手を受け入れたうえで納得させ合意に持っていくかのネゴシエーションのプロセスに観点を置くのと、自分達の言葉や意志に咀嚼されたメッセージを効果的な良質なプレゼンとして発表できるか(できたか)に観点を置く、に別れているようだ。ただし、どちらかがどちらかより重要であるという意味ではない。」

 本校のプロジェクトは前者の観点においては目標を達成できたと思うが、効果的な良質なプレゼンの点では、さらなる工夫が必要であると感じた。実はプレゼンテーション本番後、交流相手校のW先生から、「もっと早くからプロジェクトの準備を始めましょう。」と言われた。またL先生から、「今年の発表について全体的にどう思いますか。あなたの考えを聞かせてください。」とも言われた。それらを聞いたとき、私は正直にうれしかった。このプロジェクトを成功させようともがいてきた苦労から次につながる芽がでてきたからだ。次回、さらなる飛躍ができそうだという実感が持てたからである。

 2011年、正月にある本を読み終えた。『治りませんように―べてるの家のいま』(斉藤 道雄 著)という本だ。北海道の浦河で生きる精神障害を抱えた人の生き様を描いている。この本の中で2箇所、特に印象に残ったところがあった。

 一つ目はユーメッセージとアイメッセージという言葉。ユーメッセージとは、「あなたがこうしたからとか、あなたがこう思っているからあたしはこうなのよ」というメッセージ。アイメッセージとは、「わたしはこう思うんだけど、あなたはどう思う?」という自分の思いを伝えるメッセージ。ASEPのプロジェクトにおいて、目標を高く掲げてそれを達成するためには、ユーメッセージで何かの原因を探るよりは、その場その場においてアイメッセージを考えることが大事だ。そのとき私に何ができるかを突き詰めること。

 二つ目は障害を持つ人々による「当事者研究発表会」の後、そこに関わる医者が語った言葉。「最初から最後の発表まで、もれなくすばらしかった。会場の聞く人たちの力もついてるってわかりました。全体なんですよ。あれ、聞く方も力ないと、話す方も力出ない。だからこれ、あの場面が一人二人でできるかって、まず思うわけですよね。それと一、二年ではできない。もう、無数のできごとや体験やいろんな人たち、いろんな要素がぜんぶこう混じりあって、しかも発酵かなんかして、思いもかけない味が出てるわけですよね。いい味だったですね。」

 まさにASEPWYMの歴史と重なる言葉である。聞く側に力がないと、話す側にも力が出ない。ASEPは個々の人、それぞれの学校、それぞれの国だけで成り立つプロジェクトではない。多様な関係性の中で個々人の力が生かされ、それがチームのコラボレーションに生かされ、本番当日、プレゼンテーションを聞くオーディエンスと共に会場の雰囲気が醸成される。

 ASEPに関わって10年以上経った。日常のなにげない会話、本の中のある文章、テレビで誰かの語った言葉が、ふとASEPの活動の何かとつながることがよくある。そして10年関わっても、毎回毎回、新たに自分の中に目標が見えてくる。「聴衆の思いを巻きこむことのできる効果的なプレゼンテーション」が次なる目標だ。2011年のASEPに向けて、またスタートを切ろう。

 

 

 

 

My thoughts for the success of ASEP 2011

Ryo Nishi

Nanzan Kokusai High School

ryo248@yahoo.co.jp

Outline of our collaboration

October: Collaboration between Shu-Te and Nanzan started.

November: Teachers began to exchange by using Skype. Students did so by using Facebook.

Early December: The topic of presentation was decided. We continued discussing our presentation.

Mid December: Students began to use Skype. They were using Skype everyday. We did the questionnaire in each school.

Late December: We met in Kaohsiung and spent about three days preparing our presentation.

 

Facebook and Skype made our exchange better.

              Unlike in last year, Both Taiwanese and Japanese students often used Facebook. They made use of it in various situations, for example, self-introduction, daily communication, discussion our presentation. We could know what Taiwanese students were really thinking about our project. There was a warm episode. In Facebook, Japanese students knew that there was one Taiwanese student’s birthday during ASEP2010. So They prepared a surprise birthday present for him.

              Students have not experienced the Skype. After they’ve had a video conference on Skype for the first time, they were using it every day.

              Because of the face to face communication on Skype, they made good relationships before meeting in Taiwan and they could do better collaboration during staying in Taiwan.

 

Conflict and mutual understanding

              I think that there were both conflicts and mutual understandings in the collaboration. We sometimes have different ideas each other. Are contents in PPT slides suitable to the topic of presentation? Is the solution that we thought a best way to solve one problem? Do we have to use one English word in this situation? Don’t one PPT slide have too many sentences?

              We spent a lot of time to find common ground. There have been successful, some are not. When we were stuck, I had to decide what the better way was, as a teacher. It was difficult for me.

              After ASEP, I thought some improvements to make the collaboration better.

1. I have to enhance my English ability for telling my thought exactly in English.

2. Some students who have participated in WYM knew well what the effective presentation was. So they especially worked for making good presentation. I want to let students who joined in WYM also participate in ASEP. It’s very important to continue participating in ASEP and WYM.

3. I have to show what the effective presentation is to Taiwanese teacher and students, by using accumulated know-how in WYM and ASEP, at the earliest possible time.

 

For the success of collaboration in ASEP 2011

              Mr. Ichimura, a business man who support ASEP, wrote in e-mail about the following. There are two important points in this ASEP project. One is that the process of negotiation toward the success of presentation is more important. Another is that it’s more important for us to actually do the effective presentation with easy-to-understand messages to the audience.

              I think our collaboration was very successful in the former case. But we left room for improvement in the latter situation. After our presentation on Dec 28th, one Taiwanese teacher said to me, “We have to start the preparation of our project as soon as possible.” Another Taiwanese teacher said to me, “Please let me know your impression about both our school’s presentation and others.” I thought they were looking ahead to next year. So I became very glad to hear that from two teachers. I also thought we would be able to do more effective presentation in next year.

              After coming back to Japan, I read one book. Then I found two memorable suggestions in the book. The first is that it’s very important for you to think with sincerity what YOU can do in various situations, before you seek a cause for others. The second is that audience’s ability to listen is as important as speaker’s ability to tell.

              These suggestions overlap the activity of ASEP and WYM. When I’m reading a book, when I’m watching a TV, when I’m talking with my friend, I often find some hints for the ASEP project. More effective presentation to the audience is the next goal for us. Let’s start the preparation of our project to ASEP2011!