ASEP 2007  初めて参加して学んだこと

                              福井県立若狭高校  岩本守聰


  1. はじめに

WYM や ASEP を知ったのは、同県の福井商業高校での取り組みの発表を聞く機会があったからだった。最初の印象は、なんてすごいことをしているんだ、というものだった。アジアの中学・高校・大学生と一緒にプレゼンテーションするなんて、今の自分の学校では考えられない、と。私は英語教師であるが、進学校での指導をしていると、模試成績や小論指導、受験指導に追われ、その方向が正しいのかさえ考えるヒマがない状況が現実にある。しかし、だからこそ、 WYM や ASEP が輝いて見えたのかもしれない。


  1. ASEP を初めて直に見て

   今回は生徒を連れてこずに、「視察」という形で参加させていただいたのだが、まず参加引率の先生に英語の先生が少ないことに驚いた。プレゼンテーションの計画段階では確かに英語が必要だが、英語はたとえ片言でも、参加していれば上手くなるし、相手国も英語は第 2 言語だから気兼ねなく使える、という説明で納得がいった。英語の先生でなくても国際活動に興味と熱意さえあれば、他の先生にもできる。転勤がある私たち高校教師にとっては大きな魅力だった。また、行きたいという生徒がいれば、自分一人でも連れてきて参加させたいという熱意のある引率の先生方が多く、始めは消極的だった自分の意欲にも火がつき始めた。

   発表日前の生徒同士の各学校でのコラボレーションも力の入ったもので、英語が普通に道具として使われていた。それは試験の点数を取るための英語ではなく、意思疎通のための英語だった。発信する英語一言一言が生きていた。

   大会当日、生徒たちは他国の生徒たちと協力しながら、見事なプレゼンテーションを披露した。影戸先生の言葉通り、これからの時代に必要な英語力、プレゼンテーション力、情報機器の操作能力の3つの力が高いレベルで実現されていることが実感できた。また、その大会での発表がたとえうまくいかずに失敗したとしても、それ以上の大きなもの、人と関わる力、人との違いを理解し受け入れる力、自国以外の友人達、等を得られるこの企画には、私の当初の想像以上に得るものがあることに気づくことができた。そして何より、参加している生徒たち全員が生き生きしていて、目が輝いていた。


  1. 国際連携と今後の英語教育の方向性

   センター試験にリスニングが入って以来、高校でも音声指導に関する新たな取り組みが増えてきている。生徒の将来のため、という殺し文句で受験技術を磨いてきた私だが、ふと立ち止まってより広い世界の目から日本の英語教育を見てみると、日本の前途にある大きな目標がまだまだ遠くにあることに気づいた。音声指導だけの世界にはない新たなビジョンと未来の可能性を、今回の ASEP は見せてくれた。何のために英語を学ぶのか、このモチベーションを与える意味において、 ASEP は充分な答えを出してくれている。おそらくたとえ少数しか参加できなくても、プレゼンの映像を見れば他の生徒も意欲を湧かせるだろう。知らない人と英語を通じてつながることは、こんなにも魅力的だったのだということを、改めて思い出すことができた。

   国際連携とは、人と出会い、体験を通して自分を成長させること、その人生の学びが世界に広がることである。国内にいてもそれができる時代がやってきた。あとは、教師の一歩踏み出す勇気だけである。

 

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