ASEPレポート 市村

17.本年のASEPの特徴

本年のASEPの特徴を、相互企画であるワールド・ユース・ミーティング(WYM)との運営上あるいは人的連携の視点と本年ASEP企画自体の新機軸に分けて述べてみる。

 

17.1 ワールド・ユース・ミーティング(WYM)との連携

この6年間に相互に開催されたASEPとワールド・ユース・ミーティング(以下WYM)は、自発的にお互いに見習い、止揚する関係になっており、いい意味でそれぞれに経験したものを上手く取り入れている。それを2つの側面から見てみよう。

 

17.1.1 運営の連携

 昨年8月のWYMでは進行上従来の入れ替わりのプレゼンだでなく、1日中続くプレゼンの集中力を絶やさないためにインタラクティブ集計システム「Edu Click」を利用して各プレゼン終了直後に会場聴衆に渡したリモコン操作でそのプレゼンのリフレクションを即座に表示した。結果的に当初の目的以外に自分達のプレゼンが聴衆にどのように評価されたが即座に判明し、「よかった、よかった」で終わった従来に比べて、プレゼンの評価の客観性が加わり、今後いかにブラッシュアップしていけばよいかという意識と観点が明確となった。

 本年ASEPはこれを取り入れて「Edu Click」で運用上同じ使い方をしており、プレゼン後の評価アンケートが壇上スクリーンに映し出される毎に自分達の評価に注目していた。さらに、WYMではルーブリックチャートに似せた各観点ごとの5段階程度の評価を表示したが、本年ASEPではプレゼン毎に「良かった所は?」と言う問いに各観点項目を挙げて聴衆がどこに長所を見つけたか、と言う新たな評価視点を加えた点が止揚した部分であり次回WYMが次回見習う点ではないだろうか。

 また、多くのプレゼンを時間通り遂行できるよう、タイムキーピンクの係りをおいて進行のコントロールをしていたのも8月のWYMに見習った部分であると見なされる。

 

17.1.1 人的連携

当然ASEPの双方メンバーはWYMへの参加メンバーと重複している、すなわちWYMからASEPへと連続参加している学生・生徒が多いしまた、学校毎においても先輩から後輩へと連携の連続の中で単年度の一過性のイベントでは醸し出せない進化への連携がある。特に本年のASEPWYMに初参加した大阪地区高校が今回はゲストとしてASEPに参加し、また昨年ASEPWYMへ教員オブザーバー参加の大学が生徒共参加で本年ASEPに参加できたことは、地域的参加拡大と大学連携参加拡大という点において今後のASEPに大きな意味をなすと考える。

このような本年ASEPの参加拡大はWYMへの参加を通じての両組織の緊密さと継続性という連携において達成できたと確信する。

17.2.1 本年ASEP自体の特徴

17.2.1.プレゼン大会

ASEPの中心アクティビティーであるプレゼン大会は今年大きな挑戦をした。従来よりこのプレゼンはInternational Collaborative Project Seminar(以下ICPS)と称して各国の協働プレゼンが前提であり、各国学校毎にマッチングをして学校協働での国際協働プレゼンを実施していた。ただし、ASEPWebページを見るとICPSにはいくつかのレベルがあって従来の各国学校協働プレゼンは中間レベルであり、上位レベルのICPSはプレゼンメンバー構成自体を参加各国生徒・学生個人でミックスさせ、テーマ決定からプレゼン作成・発表までを、メール等ITを利用し英語でコミュニケーションをとりながら実行するといレベルである。まさに本年ASEPはこれにチャレンジしたのである。今回の中心コーディネーターが新進の若い先生であり、挑戦意欲にはあふれていた。当初この話がASEP側からあった時国内ASEPメーリングリストでは従来のプレゼン指導主体での観点から、成果物としてのプレゼンが不十分になるのではとか、過程重視であっても短い滞在時間ではたしてプレゼン作成・完成できるのか、といった議論もかわされた。結果的にASEP新進コーディネーターの意欲を重視して高レベルICPSに挑戦したわけだが、バックグラウンドでは現地先輩先生や日本側WYMメンバー教員の進行手順のきめ細かい指導が国を超えて実行されていた。

 詳細な評価は今後の各教員の報告のなかでの評価を待つ必要があるが、総じての感想は例年の純粋なプレゼン技法の完成度を除いて、ICPSの高レベルに挑戦した結果としてのプレゼンという観点でみれば概ね目標は達成されたように考える。

 今一度、チャレンジしたASEPとそれをサポート・アドバイスした国内教員各位の貢献に拍手を送りたい。

 

17.2.2.ASEPの運営そして今後

 何年間かASEPに参加あるいはメーリングリストなどで経緯を見守っていると、内部の動きの色々な種類の情報が伝わってくる。

 本年のASEP運営上の大きな特徴は前項に記述したが中心コーディネーターが新進の先生に代わった点にある。すなわち組織の世代交代(あるいは世代継続)が行われたことである。今後の継続性を考慮すれば6年を迎える時点ではやはり必要なことである。当然先輩の経験者達は後ろに要点でサポートしていることはいうまでない。同様に国内参加校においても新規参加はもとより新任教員の参加などやはり拡充への世代交代の機運がではじめたのも参加する側の特徴であろう。

 もう一点は、来年の話つまり「ASEP2006」の話題」が、来年のまた会いたいという感情的希望からだけでなく、主催の高雄教育庁幹部より明言されたり、「ASEP2006」に向けて新に樹徳技科大がサポートに加わり早い時期でのエントリーをつのり自ら開発したWeb上グループウェアでASEP活動をサポートしていく提案もあった。

 どういう形にせよ、どのような協賛になるのせよ心の中より「来年もまたあいましょう。」ということばを「さようなら」の代わりに言えたことは本年の特徴のひとつだった。

 

17.3. ASAEP、WYM、連携(むすびにかえて)

毎年それはやってくることは分かっているのだけれど。

8月のWYMででも今年のASEPででも。

 ASEPにおいて、プレゼン大会がひとつの公式アクティビティーであると同時に参加する生徒・学生にとってのもうひとつのアクティビティーはホームステイだ。たった3日間であるけれど、昔に比べてホームステイなどありふれた交流イベントになったのかもしれないけれど、短いホームステイを終え高雄を去る朝の空港ロビーは毎年同じ光景が繰り返される。

 写真を撮りあっている笑顔がいつしか涙顔になり、そして抱き合い、あるいはホストの両親に目を拭われ。毎年分かっているはずなのに、でもこの光景を目の当たりにするとどうしても「いい年をした大人」の自分も何か感じるものがある。

 去年教員のみ参加で今年は生徒も来た先生は、「去年この光景をみて是非生徒にこれを体験させてやりたいと思っていた。」と。 今年教員だけで参加した先生は「来年は絶対生徒をつれてこなければ。」と。

 凡そ、家庭・家族と学校と仲間とである点ではストレスの少ない慣れ親しんだ環境で日々を過ごせて、その中で「教育」の意義と場が問われて、親や先生は「子ども」になができるのかいつも問い掛けている。

 子どもが成長し学び、それが自らのアイデンティティを確立する旅だとすれば、この旅を助け子ども達の背中を押す「手」が必要だろう。ひとつは「親や家庭の手」であり、もひとつは「友達や先生や学校の手」であり、そして、ASEPやWYMのような「第3の手」が。